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オトナになりましょ
あのね。 俺はオトナじゃないから。 きみとおんなじ中学3年生なんですよ。 「今日の宿題わかんないから教えて」 これはまぁいいでしょう。 「お腹すいたから何か食べさせて」 まぁそれもいいでしょう。 「なんで株は毎日値段が変わるの」 ちょっとしんどいけど調べて答えましょう。 「これ持って。重い」 ムカつくけど、いいとしましょう。 「俺が寝るまで寝ちゃだめだよ」 はいはい、マッチ棒でも目蓋に挟んでおきますよ。 「眠れないよぅ」 背中を一晩中でもぽんぽん叩きましょうか。 「何か面白い話して」 漠然としたご依頼ですが、何とか応えましょう。 …それでね。 …英二、聞いてる? ああ、寝てしまったんだね。 やっと寝たんだね。 やっと俺も眠れるんだね。 さて。 しかし。 目が冴えてしまった。 ねぇ、眠れないよ。 ねぇってば。 無視ですか。 まぁいいでしょう。 でも少しは布団をこっちにもくれませんか。 寒いですよ。 ちょっとひっぱりますよ。 どうして蹴られないといけないのでしょう。 ここは俺の家で。 これは俺のベッドで、 君が抱きしめて一人占めにしているのは俺の布団なのに。 でもまぁいいでしょう。 『オトモダチ』の為に母親が敷いてくれた、もう一組の布団がありますから。 俺はそこで寝るとしましょう。 煮えくり返るハラワタを鎮めて眠りましょう。 何しろ俺はずっと眠かったんだから。 「何で一緒に寝てないの!」 怒号と殴打で目が覚めるのもいいとしましょう。 怒りに震えて2時間しか寝てないのもいいとしましょう。 「どうしてどうして!!」 俺の胸ぐらを掴んで振り回すのもいいとしましょう。 「鬼!」 見当違いのお怒りも受けとめましょう。 ごめんごめん、と謝ったりもしましょう。 じゃあ夜の分ね、と抱きしめたりもしましょう。 だけどね。 俺はオトナじゃないから。 きみとおんなじ中学3年生なんですよ。 「なーんで笑うの!笑わないでって言ってるじゃん!」 君を見て、にやにやしちゃうのは我慢できないんですよ。 ←back to top |