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秋日
もしも明日晴れたなら 君の家にでかけよう そして僕は言うでしょう ちょっと近くまで来たから と、軽く笑って ウソがヘタクソだね、と 君は僕の鼻をつまんで笑うでしょう 天気がいいから散歩でもしないか と言えば、きっと君は いいよ と答えて、そのまま家から飛び出してくるでしょう スウェットの上下で、汚いつっかけもそのままに 飛び出してくるでしょう そうして僕たちは君の家の近くに流れる川べりをただ歩くでしょう 君はデタラメだらけの歌を歌うでしょう 空が青いねと嬉しそうにふりあおいで 手近のススキを抜いて 指揮棒のように振り回しながら歌うでしょう 僕たちは内容なんてない会話を時折挟みながら ただ河川敷を下流に向かって歩くでしょう 時々、僕たちよりも早く、紅葉の一つも河を流れて うかうかと歩く僕たちを追い抜かすでしょう 君はそれを何回か見送ってから、 突然早足で歩き出すでしょう 紅葉に負けるなと笑って、僕をせかすでしょう そして、僕たちは本来の目的を見失って、 どんどん歩調を速め そして競争して走り出すでしょう 君の手にあったススキはその時にどこかに 失われてしまうでしょう じきに息を切らせる君に僕は追いついて 君を捕まえるでしょう 僕たちは笑いあいながら芝の上を 転がるでしょう その頃には秋の空も暮れかかって 仰向けになった君の頬は茜色に染まるでしょう 少し寒いね と上がった息を整えてから、 君はひんやりとした風に突然気づくでしょう そうだね、そろそろ帰ろうか と僕は君の茜色の頬に軽く指を滑らすでしょう 君はきっと地団太を踏むでしょう 僕のことを鈍感だと罵るでしょう 頬をぷっくり膨らませるでしょう そして、勢いをつけて身を起こし、僕の首にかじりつき その反動でまた仰向けに倒れこむでしょう 僕の身体を掛布団のようにして 芝の敷布団に転がるでしょう 暗くなってきたよ と君は囁くでしょう そうだね と僕はようやく君にキスをするでしょう 暗くなるまで僕らは抱き合って そして一番星が出る頃には 君の履いてきたつっかけはどこかにいってしまうでしょう 僕たちはお月様に助けられながら それを探すでしょう そうして青白い月明かりの下でも尚 茜色をした君の頬にキスをして 僕たちはまた歩き出すでしょう 今度は手をしっかり握って 川べりを歩くでしょう 来る時よりも、余程ゆっくり歩くでしょう トンボは夜には眠るのかな ねぇ、英二 ←back to top |