「英二、雪だ」

大石は頬を赤くして、6組の教室に飛び込んできた

「外に行こう」

今年初めての雪
3月になって初めて降った雪

彼は少しく興奮している
わずかな休み時間に、俺の手を取って校庭を横ぎり
部室の周辺の人気のないところに連れて行く

「雪だよ、英二」

バカの一つ覚えのように繰り返す

積もるほどの雪ではなく、地面に落ちてはあっけなく消える


彼の黒髪に、ひとひらの雪が舞い降り、
溶けずにそこにとどまった


「英二、春が近いよ
毎年そうだから
雪が降ると暖かくなるから」


彼は俺の頬に口づける

顔を離すと、彼の髪に残る雪はもう少し増えていた
そして、それを見ているうちに、また


俺は彼を強引に引き寄せて、少し俺よりも背の高い彼の頭を胸に抱える
彼の頭に載った雪は、俺の息ですぐさま溶けた

「英二?」

学ランの襟元から首筋に、雪が忍び込んだ
だけど、それはすぐに溶けるから


もう春が来る




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