ことが終わって身支度を整えている時
たいてい大石は楽しそうに俺を眺めている。

「お前は着替えないのか」
と問うと、裸でベッドに横たわったままで薄ら笑う。
「着替えるよ、その内」

あまり見るな、というのもおかしな話だとは思う。
着ているものを脱ぐ時ならば、その台詞も言えようが
俺はどんどん服を身につけているのであって
むしろ恥ずかしがるのは未だ裸のままの彼のはずだからだ。

俺は負けないようにと彼の裸を見据えるけれど、
彼はなんともない顔で、ニヤニヤしているだけだ。
「どうしたんだ、手塚。早くボタンを留めろよ」
などと言いながら、身体を起こして胡坐をかく。

開かれた股の間に覗く彼の陰毛とか
その陰毛の間にまた垣間見える萎えたペニスとか
ペニスの下になって潰れている睾丸とか

彼はそれを恥ずかしいと思わないようで
タオルを股間にかけることもしようとしない。

おかしな男だと思う。
羞恥という言葉を知らない。

「ボタンがうまく留まらないのか」
俺はうまく彼を見ることが出来ない。
彼の眺め方は、一種独特で、俺は真似ることが出来ない。
俺が彼を眺める時には、一心不乱に眺めてしまう。
今、シャツの前ボタンを留める手が止まっていたように。

彼は眺められている俺に、眺めている自分を見せつける。
彼は眺めているようで、実のところ眺めさせているのだ。

俺はていのいい観客となる。

なのに羞恥するのは、俺の自意識過剰という奴なのか。

「こっちに来いよ、留めてやるから」
言われるがままに、ベッドの端に座って首を突き出す。

ぷちぷちと上から順に留めていく彼の指をぼんやり眺める。
その指の長い手が上から下へと蠢きながら滑り降りる。
甲殻類のようだと思う。
華麗な甲殻類など見たこともないが、もしいるとすれば、これだろう。

「ああ、間違った」
一番下まで降りたところで、彼はくすくす笑う。
「段違いになったのか」
この男ならやりそうなことだと俺は何となくため息をつく。
案外抜けているし、案外うかつなところがあるからだ。

「いや、ちゃんと出来過ぎた」
卑猥な笑いを浮かべて、俺を見上げる。
「完璧に留まりすぎたんだよ」
唇の端が三日月のようにくいっと上がり、薄い唇がまったく中に隠れてしまう。
薄暗い室内で見る彼の口の中は真っ暗で、俺は
真夜中のビルの屋上から、闇に吸い込まれる身投げ男の気分になる。

俺は立ち上がろうとしたが、彼はシャツの端を握って離さないので
そのまままた引かれて座り込む。
「何だ。完璧に留まったんだろう」
「完璧だね」
「じゃあもういいだろう。着替えを続けるから離せ」
「ふうん?」

俺は下着とシャツだけだったので、早くズボンを履いてしまいたかった。
ズボンを履いてしまえば、俺の皮膚と同時に俺の卑しさも隠せるとでも
錯覚しているかのように
俺は焦ってシャツを掴んでいる彼の手をつかんで引き剥がそうとする。

彼は相変わらずくすくす笑う。
「可愛いな、お前」


そうだ、俺は期待していたんだろうと思う。
彼がボタンを掛け違うこと。
そうして。


「シナリオ通りにはしてやれないけどな」
彼は俺の腕を掴んでベッドに引き倒し、上に覆いかぶさる。
「まぁ、いいじゃないか?」
シャツのボタンが弾け飛ぶ。

カーテンのように俺の目の前を一瞬覆ったそのシャツが左右に開き、
その向こうに彼の勃起したペニスが見えた。
それに俺の立ち上がっているものも。

「可愛いよ、お前。欲しがってばっかりでさ」
唇に唇を重ねながら吐息を漏らすように囁くのがこの男の常套手段だ。
「もう一度欲しいんだろう?」
そうして俺のペニスに自分を擦り付ける。


欲しがるのには手順が必要じゃないか。




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