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「ホラ、水分補給」 冷蔵庫から出したペットボトルの冷たい烏龍茶を渡される いつでも先に俺が飲む 飲みたいだけ飲んで、余ったら渡す 「はい」 「ありがとう」 なのに彼はお礼を言う 何となくテレビをつける 何となくソファに腰掛ける こぷ、と音がして横を見ると、ソファの手すりに腰掛けた男が ペットボトルを傾けていた 腹の筋が律動する 無駄のない身体つき 少し細すぎる 出来上がっていない身体 こいつの身体が完成する時、俺はそれを見られるのだろうか ぽくん、と音がして、ペットボトルから口を離して俺を見る 「何だよ、さっきから」 「お前を見てた」 「なんで」 「いろいろ思うところがありまして」 腕が伸びて来て俺の顎を掴む 下方からすくいあげるように くい、と顎を上げさせて、指で口を開く 「何を思うんだ」 反対の手でペットボトルを俺の目の前にかざして傾ける 口の中にボトボト落ちてくる液体 落下の勢いで、痛いくらいの固まりとなって落下する 「俺の顔がお気に召さないか?」 結構な勢いで流し込む 俺はせっせと喉を動かすけれど、上を向いたこの姿勢では速度に限界がある 「俺の身体もお気に召さないか?」 容赦なく流し込まれた液体は、じきにオーバーフローする 口の端に少したまったあとで、一気に喉を伝って流れ落ちる 口を閉じることはできるけれど、この男は口を閉じても 液体を流すのはやめないだろう ただ受け皿がなくなるだけだ 俺の顔面から下へとダイレクトな川流を作るに過ぎない だから俺は口を閉じない 「小さな池だ」 笑って、俺の口に人差し指を差し込む 「軽い水浴びができそうだ」 溢れた液体は二つの大きな流れを形成した 一つは耳の横から後頭部へ もう一つは喉を伝って胸部、腹部、股間へ 「ざまあ見ろ」 彼は空になったペットボトルを投げ捨てた 床に落下した瞬間のぼうん、という鈍い音と共に、いきなり押し倒された 「っぶ…」 いきなりだったので、咄嗟に口を閉じた 液体でパンパンの口 呑み込むことも忘れて 俺の上に馬乗りになったまま、彼は俺の口をこじ開ける 「こぼすなよ」 俺の口の中に出来た小さな池に舌を入れて 犬が水を飲むようにぺちゃぺちゃと飲む 俺は震える 「ざまあ見ろ、だ、英二」 彼は泣いていた 俺は彼を胸にかき抱く ああ ごめんね お前の小さなお池がどっか行っちゃったよ these twin stories, "don't leave me high, don't leave me dry" was
flashed from "high and dry" - RADIOHEAD. |