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昨日はごめん、って次の日の朝、大石は6組までわざわざ来て言った。 ちょっとさ、夕暮れで、影がのびて、日が低くて、悲しかったから。 ごめんな。ちょっと英二に甘えてみたくなったんだ。ごめんな。 そう言って、笑う。 俺は、ちょっと困ったけど、それでもわざわざ顔を見せに来てくれたのが嬉しかった。 今までと違って、部活の朝練には顔を出していないから、偶然廊下で会うのでもなければ 放課後まで顔を見れないことが多かったし、朝イチで顔が見られたのはそれだけでも嬉しいことだった。 「ふうん?もう元気になったの?」 「うん」 「悪いと思ってる?」 「思ってる」 「じゃあさぁ」 俺はちょっと浮かれてたんだと思う。 「許して欲しい?」 「うん、許してほしい」 「何でも言うこときく?」 「うん、きく」 俺は大石に近づいて、耳打ちする。 「1時間目サボってどっかいこ」 「何しに?」 「わかってるくせに」 俺は後ろを振り向いて、不二に声をかける。 「あのさ、俺、ちょっと気分わりーから保健室行ってるね」 「もー。ごまかすこっちの身にもなってよね!大体大石も、もっとちゃんと英二のこと監督してよ!」 「ごめん、今度マックな」 大石は不二に軽く手を挙げて、俺の手を取り、屋上へと向かう。 「大石は誰かにオネガイしておかなくていいの?」 「いい。俺は普段から品行方正だから、まさかサボリとは思われないから」 自分でゆーなよ、って俺は大石に体当たりする。 その時の空がとんでもなく青かったこと、俺はきっと一生忘れない。 抜けるような青さを、俺は忘れない。 俺たちはまだほんの15で。 それでも愛って何か知ってた。 恋愛の駆け引きなんかは一つも知らなかったけど 愛することは知ってた。 痛いくらい、知ってた。 「にゃは〜、いい天気!」 「そうだな」 「こんな時に勉学に励むってのもバカな話だよな?」 「英二的にはサボるのはバカじゃないんだ?」 そう笑って、屋上に上ってきたドアに鍵をかける。 「こっちから鍵かかるんだ」 「うん、この南棟だけは屋上側から鍵をかけられる」 「ね、何でもよく知ってる大石くん。ここはこの時間、誰か来たりするんですかね?」 「この時間は来ないんじゃないか」 「いつなら来るの?」 「知らなくていい、そんなこと」 「なーんで」 「こっち来いよ、英二」 大石は手招きして俺を呼び寄せる。 「そこ、生物室から見えるから」 何の為にあるのか知らないトビラのついたでっぱりに大石は腰掛けて、こっちを見てた。 その姿がすごく眩しかったことも俺は覚えてる。 真っ青な空に、黒い学ランの大石がくっきり映えてた。 俺のことを微笑んで見てた。 俺が傍に行くと、風にあおられて綿屑みたいに頭のてっぺんでぐちゃぐちゃになってた 俺の髪を、そっとほぐして手で鋤いてくれた。 その時の顔。その時の目。 俺は間違いなく彼に愛されていると実感して、胸がいっぱいになったことも覚えてる。 「ここってさ、どっからも見えないわけ?」 「うん、そう思うよ」 「じゃあシヨ?」 「うん」 「裸で」 「ここで?」 「うん、ちゃんと愛しあお」 大石はふわ、と笑うと、ちょっと待って、と言って、学ランを脱いで下に広げる。 「英二はここに乗って」 「大石は?」 「俺はいいから」 俺は大石の顔を覗きこむ。 優しい顔。俺のダイスキな優しい顔。 俺のこといっつも守ってくれる、優しい人。 「じゃあさ。んふふ」 「何、その笑い」 「おーいし、ここに座ってよ、べたって」 「こう?」 大石は足を前に投げ出して座る。 「そうそう。それで俺がまたがるから」 「英二が上に乗るの?」 「たまにはいいっしょ。決定!」 俺は大石のシャツのボタンを外し出す。 大石も俺のベルトに手をかける。 「英二、すごくキレイ」 俺の裸を見て、大石が言う。 「大石だってサワヤカさんだぜ?これからセックスしよーってオトコには見えない」 「英二、いっぱいキスしていい?」 「いいよ」 「英二、キレイ。これ、全部俺のもの?」 「そっだよ。全部全部大石のもの」 その時の空の青さを俺は忘れない。 下から大石に突き上げられて、 大石に抱かれて たまらず見上げたその空の 抜けるような青さを俺は一生忘れない。 「おおいしっ」 俺は大石の頭を抱く。 「はぁっ。もうダメ。だめ」 大石の手が俺の背中を支える。 俺の身体は痙攣を始める。 「ああ、おおいし!!」 俺たちは屋上で、不謹慎にも、階下で勉学に勤しんでいる人々の頭上で、 切なくて甘い声を出して愛し合う。 「英二」 大石が苦しそうに耳元で囁く。 「英二、アイシテル」 大石の低い声。 繋がっている身体の擦れ合う音。 つきあげる快感。 「英二、アイシテル」 「大石、アイシテル」 俺たちはほんの15で、まだまだ子供で だけど愛って何か知ってた。 愛し合う術を知ってた。 互いに与え合うことを知ってた。 狂おしいくらいに愛し合ってた。 「英二、膝」 「あ、ちょっとね。大丈夫だよん」 ちょっと俺の膝は赤くなってた。 「こっちおいで」 裸のままで、俺は大石に膝を舐められる。 大石のピンクの舌に舐められて、俺は終わったばっかりだというのに、また欲情する。 「ねぇ、大石」 「ん?」 「もう一回したい」 「ダメ」 「どーしていっつも一回だけなんだよ」 俺は拗ねて言った。 拗ねながらも、俺は大石の手を離し、大石の腕の中にもぐりこむ。 「俺、したい。もっともっとしたいよ。 一晩中ヤりまくったりとかもしたい。 もっと大石に抱かれたい」 「ダメだってば」 「どーして」 「キリがないから」 何度も繰り返された会話。 俺たちは繰り返しと、少しの変化を楽しんで日々過ごしていた。 |