THOSE DAYS/ roundabout_Eiji & Ish


艶やかな黒髪の青年は、恋人の赤髪を指に巻きつけながら問う。

「あの店に金髪に染めてる男、いるだろ。リンダとかいう」
「うん」
「あいつに興味ないか」
「何とも思わないよ」

「じゃあサチコは」

赤毛の青年はくすくすと笑う。
さも馬鹿馬鹿しいとでも言わんばかりに、笑う。
「友達になれるな、とか、いいヤツだなって思ったりはするけれど、
それ以上は何も思わないよ」

「じゃあ女の子は」
「そういや最近接してないなあ、全然」
赤毛の青年は、ごろん、と仰向けになってのんびりと考えているような仕草をする。
黒髪の青年はその横顔を不安そうに眺める。

二人の視線が合うと、赤毛の青年はおかしくてたまらないと言わんばかりに目を細める。

「でも、まあ興味ないな」
そして、もう一度黒髪の青年の方へと身体を傾け、その形のいい頭を胸に抱く。

「大石はどうなの?」
「俺は、わからない」
黒髪の青年はその胸に顔をこすりつける。

「今は誰にも興味ないけど、英二がいなくなったら、どうなるかわからない。
寂しくて、誰か探すかも知れない」

唇を噛む。
「きっと俺は一人じゃいられないと思う」

「こうして」
恋人の腕に一層深くもぐりこむ。
「暖かくて、安心して、そういうのが恋しくなるんじゃないかと思う。
英二がいないなら、他の人でもいいやって思ってしまう気がする」

「それは男?女?」
「男・・・だと思う」

ぴくっと恋人を抱きしめた腕が震える。
だけれど、赤髪の青年は天井を一度だけ見上げる。

とても、とても低い天井だ。


「少しヤだけど」
ぎゅっと、自分の一瞬の戸惑いを打ち消すように恋人を抱きしめる。
「だけど、その方がいい。お前が一人ぼっちになるより、ずっといい」

自分に言い聞かせるように、言う。
「俺が死んだら、誰か、俺じゃない誰かでもいいから、お前を守って欲しい」



黒い髪の青年は、その黒い髪に負けないほどの黒い瞳で、
その大きな黒い瞳で恋人を見る。
身体を起こし、優しく抱く腕を振り払って、怒ったように恋人を見る。
「おかしなこと言うなよ、英二」

彼の美しさに打たれながらも、赤毛の青年は誤魔化すように笑う。
口の端が猫のようにくるっと撓む、その愛くるしい笑顔を向ける。
「お前が言ったんだろ、俺がいなくなったらって」

「英二が死ぬなんて考えてない。俺が言ってるのは、英二が俺を捨てて
出て行ったら、ってことで・・・」
「そんなの考えなくていい」

これ以上恋人の黒い目に晒されることを躊躇うあまりに、性急な動きを
してしまったことは、恋人の鼻が自分の胸に当たる強さで知る。
ひたすらに掻き抱いた。

恋人は彼の強さに逆らわず、そのまま彼の胸に落下した。

彼はその後ろめたさも手伝い、わざと明るい声を出す。
少しの笑いをたたえて。
「でも死んじゃったら分かんないもんなあ。
俺の意思じゃどうしようもないし」


「英二は?」
シャツの上で拳を握る。
シャツは握らず、孤独な掌を結ぶ。

「英二は俺が死んだら、どうする」


「・・・それでもやっぱりお前のそばにいるよ」
想像もしたくないと言わんばかりに顔をくしゃっとしかめる。

「他のやつなんていらない」


その言葉の強さに、黒い瞳が翳る。
長い睫の蔭に隠れてしまう。

「俺は・・・ずるいな」


「そうじゃないよ、大石」

黒い髪を梳ろうとしても気持ちがついていかない。
痛むかも知れないと思うほどに、強く、強く握ってしまった。

「そうじゃないよ」