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その頃の俺たちは、今とはまったく立場が逆だった。
俺が拗ねて甘えて、大石はそれを受け止めたり流したりしてた。
大石がスコシおかしいな、って俺が何となく思い出した頃から、少しずつ、
俺たちは変わっていった。
それがいいとか、悪いとかではなく、俺たちは少しずつ変わっていった。



「ねぇ、おーいし」
「ん」
だいぶ日が短くなってきたある日の帰り道、
俺は大石の腕にぶらさがるようにつかまって歩いてた。
「おーいし、スキだよん」
「なんだよ、ソレ」
ふんわり笑う。
「おれもだよ、とか言わないの?」
「ん、言ったほうがいい?」
大石のその言い方が、優しいけど突き放したカンジで、俺は少なからずショックを受けた。
「別にいい」
俺は大石の腕を放して、それでも横に並んで歩いた。
こんなことで拗ねるのは大人げないってことくらいは俺にだって分かったから、
少しのガマンをして、それでも何だか傷ついたような気がして、下を向いて無言で。

しばらくそんな風にして歩いて、そろそろ別れる曲がり角ってところで、大石から口を開いた。
「バカだな、英二」
俺は、こうして中途半端に拗ねてることを言われたのかと思って、むっとして顔をあげた。
「なにが」
でも、目をあげて、少し驚いた。
大石が、とっても真剣な顔をしていたから。

「おーいし?」
「お前、ホントにバカだよ、英二」
そして、悲しい目をして言う。
「俺のこと、スキだなんてさ」
どうしてそんなこと言うのか分からなかったけど、とにかく大石の顔が怖くて、寂しくて、
壊れてしまいそうな気がして、消えてしまいそうな気がして、俺は大石の首にしがみついた。
「何だよ、おーいし。変なことゆーなよぉ」

大石はいつもするみたいには俺を包んではくれなくて、俺は心底不安だったけど、
その不安ゆえに、俺は大石から離れようとしなかった。
そうして俺たちは、夕暮れの中、ずっとそうして立ち尽くしていた。
思えば、あれが始まりだったのだ。
大石はゆっくり、ゆっくり、目に見えないほどの緩やかさで少しずつ壊れていってた。