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俺は、彼が泣くのを初めて見ました。 試合に負けても 練習がキツくても 決して泣かない彼が 俺の胸に顔を埋めて泣くのを見ました。 「ふ・・・っ」 「おーいし?」 「ごめん、英二。ごめん」 「どうしたの、大石?」 俺は大石の頭を抱く。 「大石?」 「ごめん」 セックスのあと、大石のベッドで俺は大石を抱きしめていた。 大石が疲れているような気がしたから。 俺は大石を自分の胸に抱いた。 親鳥が小鳥を懐に抱くように、俺は大石を庇護したかったのかもしれない。 「大石、どうして泣くの」 「ごめ・・・ん、英二」 「泣かないで」 俺は大石を胸にぎゅっと抱きしめる。 「泣かないで、大石」 どうか、彼の悲しみが、俺の胸にしみこんで、彼から苦悩を拭い去るようにと願いながら。 「泣かないで、大石。胸が潰れそうだよ」 「う・・・うぁ・・・」 大石の口から嗚咽が漏れる。 食いしばった歯の間から嗚咽が漏れる。 俺はどうしていいのかわからないまま、大石を必死でかき抱いた。 「大石、大石」 俺は彼の名前を呼び続けた。 そうして、壊れていく彼を感じた。 彼の嗚咽が悲しかった。 必死で歯を食いしばって、耐えようとして、それでももれ出てくる嗚咽が悲しかった。 俺の胸の中でガチガチと震えて、彼は切ない嗚咽を漏らし続けた。 俺はどうすることもできずに、彼を抱きしめて祈った。 神様 どうかどうか、神様 彼を泣かせないでください 神様 生まれてこのかた、お祈りなんかしたことない俺がお願いします どうか神様 彼を助けてください 彼をここにいさせてください 神様、どうか 俺の大切な人なんです 誰よりも大事な人なんです 俺はどうなってもかまいません 彼のためなら何でもします 彼が助かるなら俺は何でも捧げます 生贄の羊にだってなります 神様 どうか 彼を助けてください 俺は彼を愛しています 彼も俺を愛しています ああ、神様 それが罪なのでしょうか 愛し合うことは罪なのでしょうか でももしそうでも その責め苦は俺だけに負わせてください 彼には負わせないでください どうか、かみさま、おねがいですから |