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U ARE THE SEX MACHINE / EIJI-3
クラスの資料とか、宿題とか、そういうのを届けるためにクラス委員の片割れが 大石の家に学校帰りに行く、という話を小耳に挟んだ。 そして、その子が行きたくないと泣いていたことも。 「ねえ、俺、かわりに行ってあげよっか」 この俺の提案に彼女はとびついた。 そりゃそうだよな、とも思う。 行ったとなると、色々根ほり葉ほりきかれて鬱陶しいし、しかも大石の前で どんな顔をしていいのかも分からないし、それに、何しろ相手は不純異性交遊のヒトなのだ。 女の子ならイヤだろう。 だから、俺のこの提案に、彼女は相好を崩して喜んだ。 プリントやらテキストやら、結構な量の紙切れを受取り、大石の家に向かう。 俺なりに考えて、結論は出したつもりでいた。 「英二が来てくれたのか」 大石本人が俺を玄関で出迎えてくれた。 「せっかく来てくれたんだし、あがってくか?」 「うん」 家の中はすごく静かだった。 誰もいないのかと訊ねたら、大石は涼しい顔で、全員いるよ、と答えた。 俺を部屋に残して、飲みものでも持ってくる、と出て行ってしまった。 俺はぼんやり部屋を見渡した。 何も変わっていないけれど、何かが確実に変わっていた。 「開けて」 という声でドアを開けると、トレイにポットやカップとビスケットや クラッカーの類を山盛りに積んだ大石が立っていた。 「どうしたの、それ」 「そう言えば飯、今日はまだ食ってなかったから。つきあえよ」 もう夕方なのに。 「部屋から殆ど出ないから、食いそびれるんだよな」 と笑って、トレイの上に乗ったビスケットをつまむ。 正直、こういうことはキチンとした大石家では考えられないことだった。 やはり親もかなりショックで、大石に対する態度が硬化しているということなのだろうか。 「おーいし、毎日何してんの」 「勉強あるのみ。すごい量の課題だからさ」 指し示した机の上には、確かに山のようにテキストやらプリントが積まれていた。 「さすがに謹慎中だから家の外には出られないし、電話も使えないしな」 「ああ、そう言えば、携帯、解約した?」 「解約?ごめんな。とりあえず没収はされたけど、そこまでやられたとは知らなかった」 普通に笑う、その態度に俺は少し戸惑った。 「ね、おーいし」 今度はクラッカーに手を伸ばしながら、俺を見る。 「うん、なに」 俺が決めたこと。 俺だけのものじゃなくてもいい、ってこと。 「俺、シたいな」 返事もなく、ぽり、とクラッカーを齧る大石。 「イヤ?」 俺は少しビクビクする。 大石は相変わらず、ぽりぽりクラッカーを齧り続ける。 少し上の空の顔をする。 それからこっちを見る。 「腹減ってるし、食ってから」 「あ、うん」 そうして、小さくてちょっと黄色がかった正方形のクラッカーをつまみあげ、俺の口に放り込む。 「これ、英二が好きそうな味」 「あ、おいしい」 「だろ?」 「これはどんな?」 「ちょっと甘いかな」 大石は皿に乗ったクラッカーやビスケットを自分の口にも、俺の口にも放り込んでいく。 俺もおんなじようにする。 「これとこれ、一緒に口にいれるとスゴイよ」 「どんな?」 「やってみそ、はい」 「うわ、まっず」 ぽりぽり。 乾いた食事。 乾いた会話。 乾いた関係の俺たち。 「うん、だいぶ落ち着いたな」 「だいぶ、って言うか、すっごい食ったよ」 「そうだなぁ」 皿の上はすっかり空になった。 あの山盛りの量がすっかり胃の腑におさまったのかと思うと、そら恐ろしいくらいだ。 「お腹いっぱいになったっしょ?」 「うーん」 コーヒーを飲みながら目を皿に落とす。 「そうだなぁ。これだけ食べたし」 「俺、ぱんぱんだよ?」 「そっか、ごめんな、変な時間に」 「大石、満腹感ってないの」 「ああ、弱いかもな。目の前に食べ物がなくなったら、それで終わりって感じかも」 「まだあったらまだ食べるの」 「多分」 マグのコーヒーを飲む。 「でも滅多にお腹すいたって騒がないじゃん」 「ないならいいんだよ、別に。見れば食べたくなるし、食べ出したら止まらないけど」 「大石のこと、俺、沢山知らないことがあるな」 「そう?」 「うん、聞かないと言わないよね、大石」 「そうかな」 「他にも聞いていい?」 「いいよ」 俺の喉はカラカラになる。 乾いた食事と、乾いた会話で。 「大石って、貞操観念とかないの?」 「ないよ」 あっさり答える。 「他の奴等とのこと、聞いたら答えてた?」 「うん」 「他の奴等って誰?俺が知ってるのは手塚とおちび、それと人妻と3組の女。他にもいる?」 「いるけど、誰かは答えられない」 「なんで」 「英二には関係ないよ」 なんて乾いた返事。 「これからも色んな人とスる?」 「機会があれば」 「どういうこと」 「ひとまず、今までの人たちは、今回のことで関係は全部切れたから」 「俺は」 「さぁ。英二次第だな」 「俺が誘わなかったらもうシないの」 「そうだな」 「大石は、シたい時ってないの」 「シたいって言うか、出したい時はあるけど」 うっすら笑って、指をくき、と曲げて見せる。 「これで充分だしな」 「手塚とかがまた誘ってきたらどうするの」 「するんじゃないか」 「ぜ、絶対誘ってくるよ?」 「どうなのかね」 涼しい顔で、インスタントコーヒーをカップに入れ、ポットから湯を注ぐ。 俺のカップを覗き込み、聞く。 「お替わりは?」 「あ、うん、頂戴」 カップを差し出す。 しらっと受取り、同じようにコーヒーを注ぐ。 少し薄めに。 俺はコーヒーの濃いのが飲めないのを知ってる大石。 そして砂糖とミルクを適量。 「はい、熱いよ」 「ありがと」 「お、俺はさぁ」 「うん」 「俺、これからも大石とシたいなぁ」 だって好きなんだもん。 俺だけのものじゃなくっても、他の人との共用でも。 俺、大石が好きなんだもん。 離れるなんてイヤなんだもん。 みっともなくってもいい。 カッコ悪くったっていい。 好きなんだもん。 気持ちがつながってないなら、せめて身体だけでもつながっていたいんだもん。 「そっか」 こともなげに肯く。 「わかった」 俺は悲しくなった。 「ねぇ、大石」 「うん」 「手塚とか、おちびとかさ。お前のこと、好きだったんだと思うんだけどな?」 人のことでお茶を濁す俺。 こんな風に言いたくてここに来たんじゃないのに。 「そんなこと知らないよ」 笑う。 悪びれもせず。 俺は大石の手をとって、ベッドのほうに連れていく。 「知らないって…お前、人の気持ちなんてどうでもいいの?」 大石は答えない。 答えない大石のシャツを脱がせていく。 「大石は気持ちよければそれでいいの?」 もう返事をしない。 いつもこの境目がわからない。 いつからそっちのモードに入るのか。 普段の優しくて温厚な大石と 冷たくて淫乱な大石と その境目が俺にはわからない 両方とも好きだけど、だけど。 くっと喉を反らせる。 この仕草がいつも煽情的だ。 そして、俺に理性を失わせる。 「舐めてよ。入れられるように大きくして」 俺は大石の目の前にペニスを差し出す。 洗ってもいない一日の汗と恥垢のついたペニスは、少し匂う。 大石は眉を少し上げて、それでもペニスを咥える。 入れられるように、というのはハッキリ言えば大嘘だ。 見れば分かる。 俺は大石の仕草を見ただけで、既にかっちりと勃起している。 フェラチオをする必要はどこにもない。 それをさせるのは俺のエゴでしかない。 大石の口の中まで欲しいという、つまらないエゴ。 くちゃくちゃ音をたてる。 大石のフェラチオはいつでもそうだ。 じゅる、という音もつける。 大石は男の興奮するツボを押さえている。 そして、ペニスをくわえ込んだ顔は、いつだって淫らがましい。 絶対に目をあげない。 俺の暑苦しい視線を涼しげに額で受け止めて、彼はペニスを口でなぶる。 こいつは俺の興奮のツボを知っているからこうふるまうのだろうか。 たとえば手塚が相手なら、手塚の好む方法でペニスをもっと丁寧にしゃぶるのだろうか。 それとも、手塚にも同じ顔を見せているのだろうか。 手塚にもこんな風に。 俺の視界は、テレビカメラがガクンと衝撃を受けたかのように、一段下にゴン、とずれた。 俺の理性なんてもうこれっぽちも残っていなかった。 いや、少しは残っていたのか。 俺は少なくともその思いを口には出さなかったのだから。 大石の口からペニスを引き抜く。 ぎゅぽん、という大きな音がして、大石の涎でベトベトになった俺のペニスは空を掴む。 大石の口から一筋の唾液が俺のペニスにつながり、そして切れた。 薄い唇にはりついたあと、それは一筋の糸になって大石の股間に落ちる。 大石のペニスは少しだけ勃起していた。 その柔らかそうな亀頭に、滴が落ちる。 それでも大石は俺の顔を見ない。 誰が相手でも同じことだとでも言うように。 目を伏せて、次の要求を待つだけだ。 「尻、こっちに向けなよ。自分で拡げて」 こんな要求をしても、彼は一つも驚かない。 目を伏せたまま、枕に手をついて、俺に背を向ける。 片方の腕を背中にまわして、自分の尻の片側を乱暴に掴むと、彼のアナルが丸見えになる。 俺は、こういう少しだけ下品で粗野な感じのするものに対して性的に興奮する。 彼はそれを知っていると思う。 聞きたくてたまらなくなる。 口を開いちゃいけないと思う。 口に出した瞬間、失うのはわかっている。 だけど聞きたくてたまらない。 だけど、聞いても答えないのはわかってる。 だから聞かない。 だから知らない。 俺と手塚と、どっちがイイ? 聞きたくても聞かない。 だけど喉が押し上げられる。 声がほとばしる。 だから違う言葉にすりかえる。 全然違う言葉。 「おおいし、イイ?」 やっぱり答えない。 いつか口に出してしまうんだろうか。 いつか聞いてしまうんだろうか。 いつか言ってしまうんだろうか。 「俺だけとしかしないで」 言った瞬間に失われる。 だから言わない。 だけど。 きゅう、と喉が鳴る。 俺は必死で嘔吐感と戦う。 喉から出る言葉を押さえたまま そして、大石の身体はガタガタ震え出す。 ぐっと歯を食いしばって、視線を逸らせて、眉根にしわを寄せて震える。 終末はいつでもあっけなくやってくる。 「あ…はぁ…はぁ…」 俺は大きく胸を上下させて呼吸を整えながら、大石の上に覆い被さった。 高く持ち上げられた大石の両膝を彼の胸に押し上げたまま、俺はその上にのしかかる。 ずる、と彼は足を両脇によけて、俺の腰を挟み込む形になる。 その動きで、俺のペニスは大石から離れる。 そのまま俺は、大石の胸に自分の胸をはりつかせていた。 大石の心臓がぽくん、ぽくん、と動いているのを感じる。 その鼓動が、徐々にゆっくりになっていくのも。 大石も俺のを感じているんだろうか? 少しじれったそうに身をよじって、大石は頭上のティッシュに手を伸ばす。 俺はその手に自分の手を被せる。 「ね、もうちょっと待って。もうちょっとだけこうしてて。ちょっとでいいから」 もう少しこうしていたかった。 嘘でもいいから、こうしてセックスだけじゃないつながりを感じていたかった。 大石は少し眉間にしわを寄せたけど、そのまま手をひっこめた。 そうして、その手を枕元に無造作に投げ出す。 ああ、その手が俺の背中にまわされたなら、俺はもうその瞬間、死んでもいいのに。 いい加減に嫌になってきたのか、大石は10分ほどガマンしたところで、モゾモゾ動き出す。 俺はこれ以上しつこくしたところで、その内に振り払われて傷つくだろうと感じた。 だから、その前に離れて、ティッシュに先に手を伸ばした。 結局こういうことなんだ。 俺はカッコワルイことに我慢が出来ない。 自尊心を捨てられない。 傷つくことを恐れる。 だからアイシテルとかスキとか言わない。 だから大石に俺だけを見て、と言えない。 だけど、俺はそんな自分とオサラバしようと誓ったのではなかったのか? ティッシュで大石を拭いたけど、殆ど乾いてしまっていた。 「ごめん」 俺はぽそっと謝った。 大石はそっと身を起こして、服を手でまさぐりあてる。 その手を制した。 これは俺にとって、すごく勇気のいることだった。 目玉とか、鼻孔とか、毛穴とかも、全部全部開ききって、中のものがぽん、って出てきちゃいそうなくらい緊張した。 「お、大石、服着ないでさ。少しだけ、くっつこう…?」 大石は不思議そうな顔をして俺を振りかえった。 「あのさ、ちょっとでいいから。裸でくっついてて欲しいんだ。いやかなぁ。 でも、今日はきっと誰も部屋に入ってこないよね?だから急いで服着なくてもいいんだよね? こういうの、初めてだから、一度そうしてみたかったから。だから。でも。イヤならいいんだけど。 だけど俺はしたいなって」 俺はまた意味不明なことを長々とのたまった。 あの、一番最初に大石の家に行きたいと言った時のようだった。 大石は大きな黒い目で俺をじっと見て、俺の長々とした意味不明な言葉を聞いていた。 俺はドキドキして大石の返事を待った。 大石は、ふっと目を伏せると、服を探すためにベッドの下に伸ばしていた手をひっこめて、 布団にまたもぐりこんだ。 俺は、すごく嬉しくなって、大石にひっついた。 「嬉しいな」 えへへ、って頬が緩む。 「俺さ、ずっとこうしてみたかったんだ。いつも終わったらすぐに服着ちゃうじゃん。 そういうの、セックスだけみたいで寂しかったんだ」 実際、俺たちの関係はセックスだけだったのだけど。 俺は大石に添い寝をして、彼の黒髪を手で梳く。 この黒髪が大好きだ。 俺は少し赤茶けた髪をしていて、それがあまり好きじゃない。 大石の髪は真っ黒だけど、見た目以上に細くて、ふわふわしてる。 俺はおでこから後頭部に向けて、人差し指と中指で黒髪を梳く。 ちょっと乱れた後頭部の髪を手のひらで撫でる。 大石はじっと俺を見ている。 「なぁに、どうしたの」 「面白い奴だな、と思って」 やっと口を開く。 この境目も俺にはよく分からない。 でも、裸の内は滅多に口を開かないから、これは珍しいと思っていいのかも知れない。 「英二は床屋にでもなるつもりなのか」 「違うって」 俺は少し笑う。 「何で床屋だよ」 「髪が好きなのかと思って」 「うん、好きだよ、この髪」 親指と中指で髪をつまんで、擦りあわせる。 しゃり、って指から逃げる黒髪。 「つるつるなんだもん、これ」 「英二のは違うのか」 「俺はちょっと癖毛だし、ガサガサしてんの」 ほら、触ってみて、って頭を差し出す。 きっと大石は触りたくもなかったんだろうけど、俺が頭を差し出すので、何となく赤茶けた髪を触った。 かきあげるように、大きくこめかみから後頭部のほうへ、ざくっと。 「多いな」 「そうなの、だからすっげー大変。朝とか」 何気ない会話を交わしていたけど、俺はおへそから股間の方に電気が走ってた。 大石の手が俺の髪をさく、さくって掻き分ける。 こんなに何度も触ってくれるとは思わなかった。 俺は大石の髪をゆっくり扱きながら目を閉じた。 「ネコみたいな顔」 大石の少し笑った声で目を開ける。 「隣のネコの喉、触るとそんな顔する」 「その猫にするみたいに俺にしてみて」 俺は、うっとりと言う。 大石の手がそっと伸びてきて、俺の喉元を優しくくすぐる。 ああ、こんな風にあの猫はしてもらってたのか。 猫にまで嫉妬する俺。 喉元から手が滑り、えらをコチョコチョくすぐる。 くすくす笑っちゃう。 「それ、くすぐったいよ、大石」 「隣の猫は喜ぶぞ」 大石も少し笑う。 「だってこんな感じだよ?」 俺も手を伸ばして、大石のえらをコチョコチョくすぐる。 「くすぐったい」 くすくす大石は笑う。 「でしょ?」 俺たちは互いを触りながら、顔を見合わせてくすくす笑う。 「すーごい嬉しい」 俺は囁く。 「それにキモチイイ」 こんな気持ちよさってあるんだ、って俺は思った。 「こういうの、好きなんだ」 「うん、キモチイイじゃん」 「くすぐったいの間違いだろ?」 俺は大石の顔に手を滑らせる。 大石もつられて同じように俺の頬を大きく撫でる。 二人の手は互いの顔から首へ、首から肩へ、肩から胸へと滑る。 「大石」 「うん」 俺は、言わなくてはいけなかった言葉を、ここにいたってようやく口にした。 「大石、好きだよ」 大石は、少しぎょっとした顔をした。 「どうしたの?俺、なんか変なこと言った?」 「いや…」 大石は手を止めてしまった。 止まった手を自分の口元に運び、考え深げな顔をして、目を伏せる。 「お、俺に好かれてるなんて嫌だったかな…」 しばらくの沈黙の後、俺はやっと口を開いた。 「いや、そうじゃなくて…」 大石は静かに、ブツブツと独り言のように答える。 「そうじゃ…なくて?」 俺はビクビクと、だけど想像していた最悪の事態を免れたことにほっとしながら、きいた。 「そうじゃないけど…好きって…よくわからなくて」 大石は顔を少しあげて俺を見た。 「俺、大石のこと、ずっと好きだったんだよ。 初めてダブルス組んでから、ずーっと大石のこと、好きだったんだ。 今まで言わなかったけどさ、大石は俺の特別に大事な人なんだ」 大石は返事をしない。 ただ、俺の顔をじっと見ている。 不思議そうに。 異国の聴いたこともない言葉を話す人を見るように。 俺はまたよくわけのわからないことを言い続けた。 「俺さ、大石とセックスして、ずっと大石は俺としかしてないって思ってたのね。 だから、正直言って今度のことではすごくビックリしたし、ショックだったんだ。 だけど、それでも、俺、大石と一緒にいたいんだ。 大石は俺だけじゃないかもしれないけど、俺は大石だけなんだ。 大石としかしたくないし、大石じゃないと嫌なんだ。 俺、大石が好きで、これからも好きで、だからこれからもセックスだけでもしたいんだ」 「…よくわからないんだ、英二」 大石は苦しそうな顔をした。 「英二が何を言ってるのか、よくわからないんだ」 絞り出すような声で苦しそうに囁く。 「セックスをするのに理由が要るのか。 ただもよおした時、そこに相手がいればいいんじゃないのか。 入れたり、入れられたり、それだけの話じゃないのか。 英二はセックスしたくて、俺がその時、そこにいたんじゃないのか。 その前に何か理由がいるのか。 好きだからセックスするのか。 好きじゃないとセックスしないのか。」 苦悩で顔がゆがむ。 俺は息苦しくなって、その頬に手を添えた。 「大石、俺…」 息が出来ない。 喉が詰まる。 言葉に詰まる。 俺は、苦し紛れだったんだろうか、大石の唇に初めてキスをした。 |